ボンザーの謎

ボンザーは一般のサーファーには謎多き存在だ。

トライやツインと何が違うのか?スピードが速いと言っても、トライフィンだって十分速いし、何よりボンザーが本当に圧倒的に速いなら、パイプやチョープーでは、皆ボンザーに乗ってるはずだ。

でも、あなたもご存知の通り、実際は違う。

ではボンザーの優位性はなんだろか?
まずボンザーの設計思想から考えてみる。
サーフィン中、波の上を走るボードのボトムには、喰わせているレールとは反対側の斜め前方から水流が走る形になる。フィンはその水流をうけて推進力を発生させつつ、かつ舵取りの役目を果たす。これはシングルでもクアッドでも、全てのボードに共通することだ。
ここに於いて、ボンザーが特殊なのは、そのサイドフィンに舵取りの役目を与えていないこと。厳密に言えば、多少は舵取りを担っているかもしれないけれど、それはあくまでも副産物であって、狙ったものではない。
特に3フィンボンザーのサイドフィンは、水流を受け止めてスピードアップに繋げるための壁に過ぎない。
だから、よく言われるようにボンザーはシングルの改良型だし、そのサイドフィンはフィンというよりコンケーブが延長されたもの、と考えるのが妥当だ。
で、ボンザーの優位性は?というところに戻って考えてみる。
これは乱暴にまとめてしまえば、「シングルなのにスピードが半端ない」ってことになると思う。
だから何?と思ってはいけない。
古来より名だたるシェーパーやサーファーが「全てのテクニックはスピードが可能にする」と言ってきたではないか。
だからサーフィンに於いてスピードは善だし、全ての源なのだ。
話が脱線しそうなので元に戻るが、要するにボンザーはシングルの特徴を持ったまま、スピード(それはつまりコントロール性に繋がる)に長けた性能を持っている。ということだ。
どんどん話が長くなるが、じゃあシングルの特徴や優位性は何だ?ってことを考えなきゃならない。
シングルは誤魔化しがきかないとか、レールで乗るものとか、抵抗が少ないから他のフィンシステムより速い、などとよく言われる。
これらのことは、シングルフィンのボードに乗ったことがあって、かつ、ある程度乗れる人なら解ることだが、真実100%って話ではない。
誤魔化しが効かないと言っても、それを解消するためにボリュームがあるボードが多いし、シングルが速いのは基本的にダウンザラインだけだし。レールとフィンを使う場面では、他のフィンシステムの方が絶対に速い。
だからシングルフィンを活かすには、ダウンザラインのスピードを使って大きいサーフィンをするってことになる。大きいサーフィンをするにはレールを使うし、波をよく知ってなきゃならない。
簡単に言うと「難しい」ってこと(笑)。でもシングルやボンザーの優位性はそこにあって、それができると気持ちいいんだ。
要するに、数値的な絶対性能じゃなく、満足感や快感といった体感性能が高いということになるのかな。
結論がこれじゃあ、あんまりなので、もう少し考えてみる。
例えば、トライフィンで極端に深いボトムターンをすると、ボードはリップの方へすっ飛んでいくか、レールが食い過ぎて失速する。これは回頭性やパフォーマンス性の副作用だが、トライフィンのボードではそんな風にして、知らず知らずの内に浅いターンや力加減を強いられている可能性がある。ツインなら、なおさらだ。
反面、シングルフィンのボードは回頭性が高くない。急激な入力はフィンアウトに繋がるのでできないが、じわりと深く強く寝かしていくことができる。その特徴をいかして深いカービングができるってことだ。
結局ボンザーの良さはその辺りにあると思うんだけど、どうかな?


Taylor Knox Surfing a Bonzer at V-Land